第1回「茶の起源 ―紀元前― 」 (1) 茶の起源を巡る ~茶は5,000年前の医療薬~
- ewatanabe1952
- 2023年1月4日
- 読了時間: 5分
更新日:4月30日
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茶道の歴史 (全10回)
第1回「茶の起源 ―紀元前― 」 (1/3)
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(1) 茶の起源を巡る ~茶は5,000年前の医療薬~
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一服のお茶には、香りの奥に宿る人の営み、自然の恵み、そして古の知恵の歴史が注がれています。
その一口が、実は五千年も前に見出された知恵の一滴だとしたら——。
今日、私たちの手の中にある、その一碗。
茶道の歴史をひもとくこの連載の第一回は、「茶の始まり」からご案内いたします。
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抹茶(茶)の起源を調べるには、抹茶として精製される以前の「茶葉」の歴史をたどる必要があります。
その起源を知るためには、遥か5,000年も昔の古代中国に伝わる神話の世界にまで遡らなければなりません。
歴史上「茶」に関するもっとも古い記録とされるのは、古代中国の神話に登場する「三皇五帝*」の一人で医療(漢方)や農耕の祖(神)とされる『神農大帝*』にまつわる逸話です。
『神農大帝』は、人々のために数百種類もの草を、自らの身体で試したと伝えられています。
その神話には、次のような一節が記されています。
………
「百草の滋味を嘗め、一日に七十毒に逢う」
………
すなわち、『神農大帝』は命をかけて草を食べ、毒にあたっては、それを解毒する術を模索していたのです。
そしてその毒を解くために用いたとされるのが、「荼」と呼ばれる植物であり、この「荼」こそが、のちに「茶」と呼ばれるようになる植物の原型であると考えられています。
このことから茶の発見(起源)は紀元前2700年前頃の神農時代まで遡るとされ、当時の「茶」現在のように飲料として楽しまれるものではなくその葉を噛んだり、煎じたりして、薬草として用いられていたと考えられています。
その後、漢王朝時代(紀元前206年-220年)に、「茶」が薬として明確に記録されるようになります。
その代表的な記録が、古代の医学書『神農本草経*』です。
この書には365種類の薬物を「上品」「中品」「下品」の三類に分類され,それぞれ「性質」「薬効」などを詳しく記しています。
「茶」についての記述も存在し、以下のように記されています
………
「茶味苦、飲之使人益思、少臥、軽身、明目」
―茶の味は苦く、飲むと思考を深め、体は軽くなり睡眠が少なく目も覚める―
………
このように、すでにこの時代には「茶」が心身を整える効果のある薬草として用いられていたことが伺えます。
なお、この時代には今日の「茶」という文字がまだ確立されておらず「苦菜」を意味する「荼」の字が使用されていました。
また「荼」というものが現在の「茶」と同じであるという確証はないものの時代を経て文字としても「茶」に置き換わっていることから当時の「荼」は今日の「茶」と推測することができます。
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現代では嗜好品として親しまれている「茶」も、その出発点は命を守る薬草でした。
私たちが茶を手にするとき、その背後には数千年に及ぶ人々の叡智と祈りが宿っています。
次回は、そんな「茶」がどのようにして日本へと渡り、文化として花開いていったのかをご紹介します。
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まとめ
茶の起源は5,000年前の古代中国に遡ります
『神農大帝』が毒草の解毒に使った「荼」が茶の原型です
漢時代には「茶」が薬草として記録されるようになりました
『神農本草経』に茶の薬効が記述されています
初期の茶は嗜好品ではなく薬として用いられていました
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登場人物
神農大帝 ………
生没年不詳|三皇五帝の1人|医療神|農耕神|
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用語解説
[用語] 三皇五帝|さんこうごてい ………
[人物] 神農大帝|しんのうたいてい ………
[書物] 神農本草経|しんのうほんそうきょう ………
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|関 連 記 事|
第1回「茶の起源 ―紀元前― 」
(1) 茶の起源を巡る ~茶は5,000年前の医療薬~
(2) 茶の登場 ~正史における茶の登場~
(3) 茶の発祥地 ~茶はどこで生まれたのか~
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茶道の歴史 (全10回)
第1回「茶の起源 ―紀元前― 」 (3)
第2回「茶の渡来 ―奈良時代から平安時代へ― 」(5)
第3回「喫茶文化の確立 ―鎌倉時代― 」(8)
第4回「喫茶の多様化 ―室町時代(前期)― 」(6)
第5回「茶の湯文化の確立 ―室町時代(後期)― 」(6)
第6回「茶道の大成 ―安土桃山時代― 」(3)
第7回「茶道の飛躍 ―江戸時代(前期)― 」(4)
第8回「茶の湯の遊芸化 ―江戸時代(後期)― 」(6)
第9回「茶の湯の救世主 ―明治時代― 」(5)
第10回「近代茶道の幕開け ―大正時代から現代へ― 」(3)
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